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やっと高校生になって、ゆとり感が抜けたブログ。サブカル中心とした学校生活を送ります。過度な期待をしてやってください。

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「フン、素直に死ねばいいものを。お前が足掻いた所で、俺には攻撃一つ入れることさえ不可能だというのに。まあいい、これで終わりにしてやる」
 そう言うと男は今まで目に装着していた目隠しをゆっくりとほどいた。
「ウッ!?」
 男の目と俺の目が合った。と同時に、俺の身体はまるで凍り付いたかのように動けなくなった。
 ――金縛り……!――
「ありがたく思え。お前のような人間にこの技を使ってやるのだからな」
 男の鋭い目は不気味に俺の目を捉えている。
「ついでだから教えてやろう。俺が何者かということをな。俺の名は『リリューク・ウラ・ヨルムンガンド』。影の概念を支配し、十七番目の概念の主、『影縛の躁牙』の名を冠する者」
 ――『概念の主』……? いったい何の事なんだ。そもそもこいつは本当に人間なのか……?――
「まあ、このような事を言ったところでお前は知るはずもないか……」
 リリュークは再び、手にナイフを構えると俺に突き出した。逃げなければ。しかし身体が全く動こうとはしない。これでは逃げようにも逃げられない。
 ――動け、動いてくれよ!――
「無駄だ。俺の『閉塞の蛇眼』からは逃れはしない。お前の身体は、すでに筋肉が圧迫され動けない状態となっているからな。まあ、並の人間なら呼吸器官も停止して即死のはずだが、やはり『選ばれし存在』というだけあって即死とまではいかないが」
 ――俺が『選ばれし存在』? どういう意味だ……?――
 そんなことを考えているうちに、リリュークはゆっくりと俺の元まで近づいてくる。鋭く光るナイフを構えながら。
「さあ、お喋りは終わりにするか。俺も時間がそんなに無いんでね。今こそ、お前を一瞬にして八つ裂きにして、地獄に葬ってやるよ!」
 リリュークはカッと眼を見開くと、手に持つナイフを俺の首に向かって斬りつけた。
 ――死ぬ……!――
 俺には抵抗する事さえ出来ない。このままここで死ぬしかないのか。何が俺をこの状況に追いやったのかさえも知らずに朽ち果ててしまうのか。ついさっきまで、幸せを感じていたっていうのに……。
 絶望的な状況に俺は覚悟を決め、目をつぶったその瞬間。その瞬間にそれは起きた。
「ドスッ!」
 俺の耳に大きな鈍い音がした。俺の首が斬られた音ではなかった。確かにちゃんと自分の首は繋がっていたからだ。じゃあ今の音は一体……?
 そう思って恐る恐る目を開けると、そこには吹き飛ばされたと思われるリリュークの倒れ込んだ姿があった。
「え……!?」
 一体、自分の目の前で何が起こったと言うのだろうか。リリュークはコンクリートの道路に叩き付けられており、無言で倒れていた
「お兄ちゃん、大丈夫だった?」
 ――え……、『お兄ちゃん』ってまさか……!――
 聞き覚えのあるセリフ。思わず耳を疑った。何故ならその声の主が、まさしくさっきまでベンチで眠りこけていた凜だったのだから。
 とっさに振り向いた俺の目の前には、確かに悠然と凜が立っていた。
「凜! いつの間に起きてたんだ!? それよりあいつが倒れてるのは、もしかしてお前がやったのか?」
「そんなことはいいから、お兄ちゃんは下がってて! じゃなきゃ、お兄ちゃん、殺されちゃうから」
 『殺されちゃう』の言葉があまりにもリアルに俺の耳に響いた。何のジョークでも無く、まさしく俺がおかれている状況は生死を懸けた現実なのだから。そして目の前にいるのは、俺が今まで見てきた凜ではなく、全くの別人であることに気付かされた。
「でも凜は!? 凜はどうするんだよ! あいつが起き上がったら、お前、殺されちまうぞ!」
「それなら大丈夫☆」
 今度はいつもの凜の無邪気な笑顔で答えた。
「大丈夫って……」
 するとさっきの衝撃で陥没したコンクリートが僅かに動いた。かと思うと、倒れていたリリュークがゆっくりとその身体を起こした。
「よくもやってくれたな……、小娘!」
「あいつ、もう起きあがりやがった!?」
 リリュークは再び姿勢を戻すと、ナイフを右手に構え直した。
「『概念の主』の一人である俺が、貴様のような人間の小娘ごときに、このような攻撃を受けるとは何たる恥……! 覚悟しろ、小娘! 久遠鍵士を殺す前に、まずは貴様を血祭りにあげてやる!」
 リリュークは風を切るような電光石火の速さでこちらへと猛進してくる。完全にリリュークは怒りに燃えているような勢いだった。
 ――そうだったのね。やっぱり校長先生の言ってた事は本当だったんだ……――
 凜はなにか納得したような感じで頷くと、その口を開いた。
「お兄ちゃん。まだお兄ちゃんには、どうして中学校を卒業した後、中国に留学したのか、まだ言ってなかったよね?」
 こんな時に一体何の話をしているんだ、凜は? もはや絶体絶命の大ピンチだというのに。
「あ、ああ。そうだけど」
「それじゃあ教えてあげる!」
 すると凜は迫り来るリリュークに向かって自分も接近した。
「何!?」
「『八極拳 六大開拳八大招式 連火極掌』!」
 一瞬の出来事だった。凜が何て言ったのかは早口で分からなかったが、凜の拳がリリュークの身体へと突き刺さり、リリュークは後ろに吹き飛ばされた。その動きはまさしく、凜と一緒にやった格ゲーの世界でしか見たことの無かった、中国拳法というものだった。
「お兄ちゃん、今のうちに逃げるよ! 早く!」
「分かった!」
 ここは凜の言うとおり、リリュークが倒れているうちにこの場所から逃げるのが先決だ。俺と凜は早足でこの場から逃げ出し、一目散に家へと向かった。
 しかし二人が逃げたすぐ後、またしてもリリュークは起き上がった。
「チッ! 油断したな……。まさかあんな中国拳法使いの小娘が久遠鍵士の仲間だったとは。だが、まあいい。いつでもあいつらは片付けられるしな」
「その言葉、本当かしらねー」
 物音も立てず、建物の影から夕方、男と話していた例の黒マントの女が現れた。
「ブリュンヒルデか。いつからそこにいた?」
「さあね。少なくともあなたがあの女の子にやられる時にはいたけどね」
 女は嘲け笑うように言った。
「黙れ! あれは油断によって生じた事であり、あれぐらいの攻撃、俺なら簡単にかわせたはずだ!」
「油断も弱さのうちだと思うけどね。しかし、私も驚いたわー。あんな中国拳法使いがこんな所にいるとはね。それも意外とできそうだし」
「フン、所詮はただの人間に過ぎん。奴共々、久遠鍵士は明日までに殺してやる。貴様は手を出すなよ。奴らは俺の獲物だからな」
 そう言うとリリュークは夜の闇に消えた。
「さあどうかしらね? あなたの手に負えたらの話だけどね。まあせいぜい期待してるわ」
 女は皮肉っぽく言うと、彼女もまた黒のマントと共に闇夜に消えていった。
        *     *     *

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 時刻は既に午前零時。どんちゃん騒ぎも、時間が経つにつれて静かになり、さすがの俺たちも酒が入っていたせいか、眠気には勝てず、明日も学校があるという事で、パーティーはお開きになった。
 敦志と瑞樹、それに蘭子さんはあんだけ騒いだにも関わらず、とても賑やかに話ながら帰って行った。絵莉菜も片付けを終えると、隣の自分の家に帰っていった。未由は案外お酒に弱いタイプなので、完全に眠り込んでしまい、その後の処理は姉貴に頼むことにした。
 そして俺は、凜が気持ち悪いといって今にも吐きそうだったため、凜をおんぶして外の空気を吸ってくることにした。
「凜、大丈夫かー?」
「う~ん、きもちわる~い」
「おいおい、本当に大丈夫か?」
「もう少しおんぶして~」
 凜はさっき以上に俺の背中にがっしりとしがみついた。
「一応聞くけど、お前、本当に気持ちが悪いんだよな? まさかおんぶ目的の芝居じゃないだろうな」
 ――ぎくっ!――
「ち、違うよ~。本当に気持ち悪いんだってば~」
「ま、未由もいないし、今日ぐらいはいいか。凜、本当に楽しそうだったしな」
 少しの間、俺と凜に静かな時間が流れた。夜の住宅街の明かりが、幻想的に目に映った。
「今日はありがとう、お兄ちゃん」
「なんだよいきなり」
 俺と凜の言葉だけが夜の街に響く。他の音は何一つ聞こえない。
「こんなに楽しかったのは久しぶりだったな。やっぱりここに戻って来てよかったよ。お兄ちゃんや絵莉菜ちゃん、それに未由ちゃんと会えて……」
「そりゃ良かった。あ、ところでさ、朝も聞いたけど、どうして突然こっちに戻ってきたんだ?」
「……………………」
 返事がない。振り返ってみると、いつの間にか凜はぐっすりと眠っていた。
「やっぱり凜は、まだまだ子供だな……」
 なぜだろうか。凜の寝顔を見ていると幸せな気分になってくる。空を見上げると今日は空気がほどよく乾燥しているせいか、晴れ晴れとした夜空には満天の星々が輝いていた。その光景が尚更、俺の気分を良くさせた。
 ――さすがにずっとおんぶしてるのも疲れるな。ちょうどベンチもあることだし、少し休憩するか――
 昼に見た桜とは、また雰囲気が違う夜桜が、夜風で美しく舞い上がっていた。通りにひとつポツンと佇んでいるベンチに腰を下ろすと、凜を起こさないようにゆっくりと背中から降ろし、自分の隣に座らせた。
「ふあぁ~。ヤベ、俺も眠くなってきたな~。よし、そろそろ家に戻るとするか」
 そう言ってベンチから立ち上がろうとした瞬間、急に強い風が吹いた。そして、それと同時に鍵士は何者かの気配を感じた。
 ――何だ、この気配……? よく分からないけど、この感じ……、嫌だ……!――
 何故だろうか。恐ろしいほどの嫌悪感が俺の心を満たしていく。風邪でもないのに、背筋が凍るように寒気が襲い、身体中が熱く苦しい。汗もどんどん噴き出してくる。
 不意に坂道の方に何者かの強烈な視線を感じた。その視線の主を知るため、重たい身体をゆっくりと動かしながら、坂の上へと目を向けた。
 するとどうだろうか。暗くてよくは見えないが、坂の上には確かに人らしき影が見える。
 ――誰なんだ、あれ?――
 その時、坂の上にいた影が一瞬にして、フッと消えた。
「えっ!?」
「シュッ!」
 あり得ない事だった。坂の上にいた人影が、一瞬にして目の前に現れ、さらにその人影から一本の腕が伸び出てきて、俺に向かってナイフらしき刃物が突き出された。
 普段はそこまで反射神経のよくない俺だったが、とっさの攻撃をかわし、一時的に危険からは回避することに成功した。
「な、何なんだよ!? どうなってんだ!?」
「チッ」
 その人影は舌打ちすると、少し後ろへとジャンプして下がった。その動きは、人とは思えないほどの俊敏生だった。
 するとようやく月明かりが差してきたことで、その人影の姿をはっきりと見ることが出来た。その姿は、俺より少し大きいぐらいの高校生のような風貌で、全身紺色の服を身に着けている。顔は少し細めで長く、首までの鋭い黒髪が夜風で揺れていた。ただ、何故か目隠しを付けているところが不自然だった。
「誰だよ、お前! いきなり斬りつけてきて!」
 すると男は静かにその唇を動かしながら言った。
「俺か……。そんな事、お前が聞いてどうする? これから死ぬお前にな!」
 またしても男の身体が素早く動き、手に持ったナイフがその動きと同じ軌道を描き、俺へと襲ってくる。
 ――こいつ、本気で俺を殺そうとしてる……! でも、なんで!?――
 そんなことを考える暇さえ与えず、男のナイフは間を空けずに、そして正確に俺の身体を狙って斬りつけられる。しかし、自分でも不思議なくらい、そのナイフの軌道をしっかりと目で追えている自分がそこにいた。さらには身のこなしまでいつもより軽く感じる。そのおかげで男の斬撃をギリギリながらもかわすことができている。
「ほう。やはり噂に聞くだけはある。が、所詮はかわすので精一杯か……。それでは、これならどうする、久遠鍵士!」
 さっきよりもさらに斬撃の速度が上がった。さらに攻撃のキレまで上がったように、空を切り裂く音までも聞こえてくる。
 ――速い……!――
 だがこんなところで殺されるわけにはいかない! 懸命に男の攻撃の回避に全神経を注ぐ。それでも間一髪でなんとかかわすことしか出来ない。
 ――マズイ、このままじゃ、俺が殺られるのも時間の問題か……――
「終わりだ」
 男が鍵士の目線から一瞬にして消えた。
「消えたっ!?」
「ヒュッ」
 男は高速移動により瞬時に鍵士の背後へと回った。
「後ろ!?」
 だが、気付いたときには男のナイフが鍵士の身体へと突き刺さる寸前だった。
「スパッ!」
 その斬撃の素早さに鍵士の身体は追いつくことが出来ず、鍵士の髪の端の数本がナイフによってスッパリと切られ、地面へと落ちた。
「うわっ!」
 あまりにも身体への負担が大きかったために、鍵士はバランスを崩してしまった。男はその隙を見落とすはずもなく、鍵士の腹に蹴りを入れた。
「フン」
「ぐっ!」
 男の蹴りの威力は想像以上に凄まじく、怒ったときの未由の蹴りとは比較にならないほどの重さ、そしてまさしく殺人的な鋭さがあった。
「ズドン」
 軽々しく蹴り飛ばされた鍵士は、そのまま電柱へと叩き付けられた。
「くはっ……!」
 叩き付けられた衝撃が身体の芯まで伝わってくる。あまりの激痛に、思わず吐血してしまった。もはや俺には呻き声をあげることしか出来なかった。

「師匠、なんだか手のつけようのない展開になっちゃいましたね……」
「三角関係はよく聞くけど、これは四角関係ね~。なんだか私も興奮してきたし、仲間に入っちゃお~かな~!」
「何故こんなにも久遠がモテるんだ!? 顔なら俺の方が数段上なはずなのに……。これでは、わざわざこのパーティーに来た意味がないじゃないか! せめて遙さんさえ来てくれればいいのだが……」
「ピンポーン」
「ぐむっ? もがむぐがもむがもぐ」(あれっ? また誰か来たのか?)
 ――キュイーーーーーーン!――
「んっ!? この感覚、俺の美人センサーが反応している! 久遠、お前はそこで彼女たちの好意を無駄にせずにしていろ。玄関には俺が行く!」
 敦志はすぐさま玄関に走っていった。恐らくその理由は、帰ってきたのが姉貴だからだろう。
「ガチャ」
「ただいまー、ってアレ? 君は確か鍵士の友達の……?」
「はい、申し遅れました。某は久遠鍵士の親友、一之瀬敦志と言います。どうぞよろしく、遙さん。それでさっそくなのですが、携帯の電話番号とメールアドレスをお教えいただければ光栄なのですが」
 敦志は、帰ってきて早々の遙に対して、いつもの美人な女性に対しての決まり台詞を並べた。
「えっ? あの、何が何だかさっぱり分からないんだけど……?」
「うおりゃー!」
 瑞樹の跳び蹴りが敦志の頬に突き刺さる。一体、いつの間に瑞樹は玄関にいたのだろうか。敦志のいるところ、瑞樹が見張っているのだろうか。
「な、また貴様か、瑞樹……」
「まったく、ほんと懲りないわね、バカは。さ、バカはこっちに来なさい」
「む、無念……」
 瑞樹は敦志の首元を掴みながら、ズルズルとリビングまで引っ張っていった。
「ただいまー! あれ、みんなそろって何のお祝い?」
「あ、お姉ぇ! お帰りなさい」
「おじゃましてまーす!」
「むぐもごがあむあー」(お帰りー)
 まだ口の中には料理の数々が押し込まれているおかげで、まともに話すらできない状態だ。
「何だかいつにもましてすごい状況になっているわねー。絵莉菜ちゃんに、さっき会った一之瀬君だっけ? それからあれ? 凜ちゃんじゃない! 元気にしてた?」
「ウン、元気だよ!」
「こんばんは、遙さん」
 敦志は瑞樹に拘束されているために口を塞がれて、「んんっー!」としか話せなかったが、それでも姉貴に名前を覚えてもらったのがよほど嬉しかったのか、ピョンピョンと跳びはねている。
「それで一之瀬君の隣にいる子は、えーと、瑞樹瑠璃ちゃんね。確か、陸上部のハードル走のエースだったわね」
「ええ、そうですけど、何でアタシの事を知ってるんですか? 初対面なのに」
「姉貴はさ、学園の全生徒の名前と顔は、覚えてるんだよ。生徒会長だから」
「そういうこと! それにしても良かった~、鍵士にも友達がちゃんといたのね」
 その姉貴の言葉に、鍵士は今朝の始業式の出来事をハッと思い出した。
「あ! そうだ、姉貴。その言葉で思い出したけどよ、よくも始業式では大衆の前で恥をかかせてくれたなー!」
「だってー、鍵士ってば本当に人と喋ったりするの苦手じゃなーい。だから、姉として弟を心配するのは当然でしょ?」
「ふざけんな。そもそも姉貴は俺に構い過ぎなんだよ」
「そんなことないと思うんだけどなー、ってあれ! もしかしてあなたは……」
 姉貴は今まで気付かなかったのか、蘭子さんの方を見ると、驚いた顔をしながらこう言った。
「蘭子先輩!? なんで蘭子先輩がこんなところにいるんですか!?」
「ひどいわね~。そういう言い方は無いんじゃない、遙?」
「あれ、姉貴は蘭子さんを知ってるのか?」
「知ってるも何も、蘭子先輩は学園出身者の中でもかなり有名な人よ! 私が弓道部の主将をやってるのは知ってるでしょ。その弓道部の第五十七代主将で、伝説の中・高六年間全てで全国優勝し、日置流竹林派を継承する範士八段、それが一之瀬蘭子、その人なのよ」
「ええっーーー!」
 蘭子さんのあまりにも意外な実情を知った俺たちは驚きを隠せずにはいられなかった。弟の敦志さえ目を丸くして驚いてるほどだ。
「よしてよ~、遙~。そんな昔の話~。それに今は遙の方が強いわよ~」
「おい、姉ちゃん! そんな話、俺も聞いたこと無いぞ!」
「師匠、本当なんですか! さすが師匠、一生ついてきます!」
 敦志は自分の姉がこんなにもすごい人間だとは思わなかったというような顔をしており、瑞樹は目を輝かせて蘭子さんを尊敬の眼差しで見つめていた。
「もういいじゃない、その話は~。それより遙も早くこっちに来なさいよ~。やっとみんな勢揃いしたことなんだし、パアッと飲もーう!」
 すでに蘭子さんは酔っぱらっているようだった。まあ、缶チューハイの空の山を見れば一目瞭然だが。
「そうだよ姉貴。早く席に着けよ。なんだかんだいって今日はいろいろ大変だったんだろ?」
「そうなのよー。よく分かってるじゃない、さすが弟ね。生徒会長って意外に大変なのよねー」
 それぐらい言われなくても、姉貴の顔を見ればすぐに分かる。他の人は気付いていないようだが、若干やつれているようだ。何年間も姉貴と暮らしている俺にとっては、姉貴の寸分の差も見間違うはずなどない。
「あの、遙さん。あのフレアって子、どんな人なんですか?」
「ああ、フレアさんねー。彼女は……、いや、私もよくは知らないの。でも、話してみると結構いい子よ」
「知らないってことはないだろ。副生徒会長の事なら、生徒会長の姉貴なら分かるはずだろ?」
「うん、普通はそうなんだけど……。元々、今年度の副生徒会長は水島さん。あの風紀委員の委員長を務めている水島蒼花さんだったのよ。生徒会の決定ではね。だけど今日の朝、登校したらいきなり学園長先生に言われたのよ。『フレアさんを生徒会長にさせる』って。私も正直驚いたんだけど、学園長先生の命令でしょ。あの生徒会もそれには従うしかなくて、こうなったの。だからこんなに帰るのが遅かったのは、放課後、水島さんたち、反対勢力の収拾に手間取ったってわけ」
「なんか、私たちの知らないところで、いろんな問題が起こってたんだね」
「ああ」
 すると蘭子さんが飲みかけの缶チューハイをテーブルに置くと、話し始めた。
「それなら私たちの世代でも、そういう問題は結構あったわね。うちらの学校は巨大組織だからね。その分、生徒の数もハンパないじゃない? だから自然と派閥みたいなのも出来ちゃうのよね。学園内の有力者とか権力がある生徒とかを中心に。まあ、生徒会って組織が学園内の最高機関だけど、結局メンバーの大半はそういった生徒達で占められているのよね~。だからこうした抗争とか権力争いは日常茶飯事なのよ」
「大変なんすね、遙さんも」
「うん、まあね。でも、せっかくのパーティーなんだし、こういうブルーな話はやめにして、楽しみましょう!」
 姉貴はワインの入ったグラスを片手に持つと、乾杯の姿勢をとった。
「そうだな、姉貴の言うとおりだ。それじゃあ気分を変えて乾杯といくか!」
「ようやくパーティーの開始というわけね」
「今日は朝まで飲むー!」
「凜ちゃん、それはいくらなんでもマズイと思うけどな……。明日も一応、学校があるわけだし」
「ダイジョーブよ、絵莉菜ちゃん! 学校なんて二の次よ!」
「姉ちゃんは大学行ってないからそんなセリフが言えるんだよ!」
「皆さん、はしゃぎすぎです……」
「それじゃあ、かんぱーい!」
「カンパーイ!」
 みんなの高笑いが部屋中に響き渡り、飲めや歌えの大騒ぎは夜遅くまで続いた。こんなにも賑やかなパーティーは鍵士にとって久しぶりだった。
 ――なんか楽しいな、こういうのって。幸せっていうのかよく分からないけど、多分幸せってこういう事を言うんだろうな。いろいろあって大変な一日だったけど、それが俺にとっては幸せなんだろうな……――
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◎ 管理人は何者?
HN:
音瑚まろん
性別:
男性
職業:
高校生を主にやってる
趣味:
PCゲーム、QMA、他サブカル全体。あと、エ〇ゲ。
自己紹介:
嫁:ふたみたん(byいつか、届く、あの空に)
  関羽さま(by恋姫†無双)
本日のオカズ:ヤンデレやメイド、最近メカ娘にも手を出し始めたようだ
好きなPCゲームw:いや、これといったものはない。浅く、広く、鬼畜を除く
崇拝する絵師:萌木原ふみたけ


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