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やっと高校生になって、ゆとり感が抜けたブログ。サブカル中心とした学校生活を送ります。過度な期待をしてやってください。

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「一体あれは何だったんだ?」
「あ、お兄ちゃん! どうしたのー、そんな所に座って?」
 教室の中から凜がとことことやってきた。
「うん。いや、ちょっと、生徒と出会い頭にぶつかっちまったんだよ」
「それは災難だったね」
「ああ。それでさ、そのぶつかった生徒、クロウって言ってたっけ。なんか女の子みたいな顔してたけどさ、男子の制服を着てて驚いたよ」
「クロウ君? あー、かなり有名だよ、クロウ君。あんなにかわいい男の子、普通いないからね。クラス中の女の子が可愛がってるよ」
「だろうな。そういう顔してたよ。C組はC組でいろんな生徒がいるんだな。あのフレアさんもC組だろ?」
 C組の教室の中を見てみると、A組と同じでまだ生徒の数は少なく、あのフレアって生徒もまだいないらしい。
「ところでさ、せっかく何だしお兄ちゃん! 今から学校見て回りにいこうよ!」
「今からか……、ってオイ!? 何、勝手にもう行ってるんだよ、凜!」
「早く行かないと時間が来ちゃうよ!」
 ――人の話、聞いちゃいないな……。まあ、暇潰しが見つかってよかったけど――
      *     *     *
 それから朝のホームルームが始まるまでの三十分間、俺と凜は学園内の名所を見て回った。学園のシンボル、巨大な時計台に始まり、色取り取りの季節の花が年中咲き誇っている中庭。高級感溢れる、アンティーク調の迎賓館。そして最後には、学園内でも女子生徒に人気の高い喫茶店、『雪月花』へと訪れた。
 喫茶店『雪月花』は名前は和風テイストであるが、様式は洋風な作りというちょっと風変わりな喫茶店なのである。しかしそこは女子生徒に人気の喫茶店。メニューは和と洋の調和をテーマにした御菓子をメインに、豊富な料理を取り揃えている。その料理の見た目の可愛らしさ、そして何より女性好みのおいしさがウケている理由だそうだ。
 俺自身はこういう店に入るのは苦手なんだが、今の時間帯のおかげで女子生徒も数人ぐらいしかおらず、それに凜も女の子なのだから、こういう店の方が喜ぶだろうと思ったわけだ。
「さ、朝の学園探検はここで終わり。てなわけで、何か頼むとするか」
「このお店、とっても綺麗だね。それにデザインも女の子が好きそうな感じだし。それじゃあ凜は、この『フレッシュラズベリーとレモンソースのレアチーズケーキ』にする!」
 なるほど。凜もやっぱり女の子、メニューの写真に映るそのケーキは値段のわりに小さく、それでいて綺麗な飾り付けが施された装飾品といった感じだった。簡単に言えば、女子が好きそうなメニューの一つだ。
「うげ……。案外高いんだな、ここのメニュー」
 凜に見られないよう、こっそりと財布の中を覗いてみると、案の定、百円玉が四枚と、十円玉が三枚。そして一円が二枚の計四百三十二円しかない。なのにメニューに書かれた値段は平気で六百円やら八百円、ひどいものでは千円以上のものさえある。凜が選んだケーキも七百五十円だと言うのに、俺はその値段さえ全財産でも及ばない。
 ――とりあえず一番安いメニューは……、っと――
 するとメニュー欄の一番最後に、『ロイヤルハーブティー〈カモミール〉』と書かれた項目があり、その値段は四百二十円。どうやらメニューの中で一番安い値段のようだ。これならば、十二円のお釣りが返ってくる。
「よし、俺も決まった」
 結局、俺は一番安い『ロイヤルハーブティー』、凜はそれより三百円以上高い『レアチーズケーキ』を頼んだ。店員にクスッと小さく笑われた以外は何の問題も無かった。
「でもさ、やっぱりこの学校ってスゴイね!」
 凜はレアチーズケーキをフォークで一口大に切ると、口に持って行きながら言った。
「そうか?」
 鍵士は小さなカップに入ったハーブティーをテーブルに置いた。
「スゴイよ! だってあんなおっきな時計、初めて見たもん! それにあの中庭とか迎賓館なんてものすごーく綺麗だったよ! 凜、ほんとにびっくりしたもん」
「でもな、凜。まだまだ学園の十分の一も回ってもないぜ? 本番は放課後からだよ」
「わーい! なんか、放課後が来るのが楽しみになっちゃった!」
「そりゃよかった」
 凜の無邪気な笑顔は、絵莉菜の優しい笑顔とはまた違ったものだった。しかし、心が落ち着く点は二人とも同じだった。
 すると、凜はレアチーズケーキを食べ終わると、その笑顔から普通の真顔、いや少しばかり深刻そうな感じの顔へと変わった。
「どうした、凜? 気分でも悪いのか?」
 どうやらそうでは無いらしく、黙って首を横に振った。
「それじゃあどうしたんだ? 元気じゃない凜なんて、凜らしくないぜ」
「そうだよね……。でも、やっぱり元気になれないんだ。本当はね……」
「もしかして、昨日、俺が学園長先生の頼みを断った事と関係があるのか……?」
「そうじゃないよ! そうじゃないけど……」
 そのまま凜は再び黙り込んでしまった。これは明らかに昨日の事が関係しているのだろう。
「いいんだ、凜。お前の言いたい事はだいたい分かる。でも、これは俺が決めた事なんだ。悪いけど、俺は凜みたいに特別な人間じゃないんだよ……」

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